東日本大震災当時、自分は石巻赤十字病院医師で、宮城県災害医療コーディネーターであったため、石巻圏の災害医療救護活動を統括しました。
この経験を踏まえ、2012年に本院に戻ってからも、次の大災害に備えるためにさまざまな取り組みを行なっています。第一に、宮城県委託事業として種々の災害医療関連の研修会を定期的継続的に開催しているほか、2018年度からは文科省補助事業「コンダクター型災害保健医療人材の養成」プログラムを開始するなど、災害保健医療人材の育成に積極的に取り組んでいます。東日本大震災時には5名のみであった宮城県災害医療コーディネーターは、人材育成が進み2020年度には26名と増員されています。今般の新型コロナウイルス感染症対応のため、宮城県に冨永東北大学病院長を本部長とする「新型コロナウイルス感染症医療調整本部」が設置されましたが、日替わりで県庁に出務し実務指揮する本部員は、災害時の調整能力を買われ、自分以下7名の災害医療コーディネーターで構成されています。人材育成の成果と言えます。第二に、避難所の状況評価情報を正確かつ効率的に集約するための電子ツールの開発に取り組み、2019年の台風19号災害において実践投入されるなど、ほぼ実用化されています。第三に、石巻での活動に参画したコアメンバーを中心に災害医療ACT研究所(NPO法人)を設立し、全国各地の災害医療担当者を対象とした災害医療コーディネート研修会を開催しています。
今後も自然災害だけでなく、新型コロナウイルス感染症やテロのようなわが国で発生しうる非常事態に対応できる人材育成やシステム構築にこれからも寄与していきたいと考えています。