東日本大震災当時、特に沿岸の医療機関は壊滅的な被害を受けました。東北大学病院は被災地の医療機関が疲弊しないよう後方支援として多くの患者を受け入れ、また4カ月で延べ2000名以上のスタッフを県内外に派遣しました。震災から10年が過ぎ、記憶が薄れていくといはいえ、この未曾有の災害に対応したこのような経験は、現在の東北大学病院にも確固として生かされています。震災を契機に院内に地域医療復興センターが設置され、東北メディカル?メガバンク機構と連携した循環型地域医師支援システムが始動しました。この地域への医師派遣システムは、現在も継続し地域医療に大きく貢献しています。ある意味後方からの支援を継続しているとも言えます。また大学病院としての震災対応の経験を基盤にした「コンダクター型災害保健医療人材養成プログラム」が、文科省から課題解決型高度医療人材養成プログラムとして採択されて人材育成にあたっています。他にもさまざまな活動がありますが、大切にしたいのは、職員皆の災難にあたって一致団結するマインドセットが形成されたことです。今回のコロナ禍にあっても、院内はもとより県内主要病院や行政との円滑な連携にもそれが生かされています。10年経っても決してあせることのない、この一致団結?連携するマインドセットこそ、今後も病院が直面するさまざまな困難に打ち克つ何よりの力になると考えています。