「雄勝硯(おがつすずり)」は、宮城県石巻市雄勝町内で採れる玄晶石が墨との相性がいいことから約600年前から生産が始まり、今では国の伝統工芸品に指定されています。職人がひとつひとつ丹精こめて彫り上げる硯は人々を魅了し、雄勝町は日本一の硯の町として知られるようになりました。しかし、東日本大震災の津波で町は壊滅的な被害を受け、今なお、再建?復興の途中です。
そんな中、仙台市出身でイタリア在住の彫刻家 武藤順九氏は、雄勝の石職人さんの協力を得て、雄勝硯を全国に発信していく「MY SUZURI (マイ硯)」運動を立ち上げました。自分で考えたデザインで世界にたった一つの硯をつくるプロジェクトは、雄勝の復興を後押しし、また日本古来の文化を再考する機会として全国に広がりつつあります。
本院では、武藤氏の理念に賛同し、1月14日(土)、闘病中の子どもたちとともに本院外来棟にて「my硯づくりin東北大学病院」を開催しました。3歳から17歳までの子どもたちとそのご家族等、約40名が参加し、職人さんにご指導いただきながら、彫刻刀を使って心を込めて石を彫りました。
後半には、当院小児外科の和田基准教授をコーディネーターに小児外科科長の仁尾正記教授と武藤先生とが「医療と芸術」をテーマにトークセッションを行いました。宮城県が世界に誇る雄勝硯を通して、子どもたちと医療者がともに命について考える貴重な機会となりました。
尚、3月には第2弾として、出来上がった硯で墨をすり、筆を使って自由に描く「心の絵巻物」を行う予定です。本院を受診したことのあるお子さんとそのご家族を対象とさせていただきますが、近日中にホームページ等で募集する予定ですので、ご興味のある方はぜひご参加ください。