その子らしい健やかさを

2016.08.12

風邪をひいて強くなり、けがをして安全を知り、心も体も、毎日の生活の中で発達を続ける子どもたち。子どもの健やかな成長は、子育てに関わる大人の共通の願いです。
東北大学病院の小児科では、さまざまな疾患の子どもたちが専門的な治療を受け、入院生活を送っています。
ご家族全員で子どもの健康について考えてみてください。

子どもは特別

 小児科学の教科書の冒頭には「子どもは小さな大人ではない」と書かれています。大人と子どもでは大きさが違うだけでなく、かかる疾患そのものが違い、年齢が小さければ小さい程、その違いが大きくなります。また、同じ治療であっても反応が異なる場面も多く見られます。さらに同じ子どもでも、体重は300g ?100㎏と幅広く、私たち小児科医が診る子どもは非常に多彩です。日常生活も全く異なるため、病気の子どもの治療には、子どもに特化した施設や診療が必要です。各地に「子ども病院」が設置されているのは、このような背景からです。当院小児科でも、出来る限り子ども中心の医療を実現するため、治療法や生活環境の改善に取り組んでいます。
また、医学の進歩により医療を取り巻く環境は大きく変化しています。小児科も同様で、最近では予防接種が普及し麻疹や細菌性髄膜炎などの感染症が減少しました。しかしながら、喘息やアトピー性皮膚炎といったアレルギー疾患や発達障害などのこころの病気は増加しており、子どもたちのケアの必要性はむしろ増しています。特に宮城県では不登校が全国に比べて多く、メンタルヘルスへの対応が重要になっています。子どものメンタルヘルスを専門とする医師は限られており、私たちも宮城県から支援を受けながら、この分野の専門医を育成するよう努力しています。

笑顔を増やす

 私は診察のときに、食べ物の好き嫌いをよく聞くことがあります。いつから何度の熱が出たとか、顔色はどうかとか、病気を診るわけですが、それよりもまず、その子に興味を持つことが大切だと考えているからです。そうすると、兄弟はいるのか、どんな遊びが好きなのか、休日は何をしているのかと、その子のことが自然と気になってきます。子どもは家族や友人、学校との関わりの中で生活するひとりの人であり、それら全てを含めて「健やかに生きる」ということであるのを忘れてはいけません。小児科学の教科書にはあまり書いてありませんが(笑)、私は、子どもを笑顔にすることも小児科医の大切な仕事と考えています。小児病棟には保育士がいて、小学校と中学校が設置され、先生が授業をしてくれています。小児専門の看護師や臨床心理士、チャイルドライフスペシャリストなども常駐しています。最近では、スヌーピーや各地の様々な「ゆるキャラ」が毎月来てくれて、入院中の子どもたちと遊んでくれています。また、親御さんと一緒に映画を見た楽しい思い出を持って退院していただくために「映画上映会」を行っています。

立場の違いを越えて理解と尊敬を

 子育ては本当に大変な仕事です。特に、親御さんをはじめとする方々の幼いお子さんに対して注ぐ労力と愛情は尊敬に値します。現在の社会は、保育士、幼稚園の先生、学校の先生などの子育てに関わる方々への理解が不足しているように感じます。多くの人の力がなければ、良い子育てはできません。立場の違いがあっても、子育てに携わる方々の目標は同じと思います。お互いの努力を理解し、尊敬を持ちつつ、様々な立場で子育てを楽しんでいただければと思います。

11月24?30日は
医療安全推進週間
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