
研究
体内の細胞増殖を生きたまま観察できるマウスの開発に成功 ―様々な疾患の治療法開発への応用に期待―
これまで、生きた動物の体内で細胞が増殖しているかを(注1)経時的に観察するためには、複数の時点で動物の臓器を採取して解析する方法しかありませんでした。この方法は動物を含む多くの実験資源を必要とします。
東北大学大学院医学系研究科糖尿病代謝内科学分野および東北大学病院糖尿病代謝?内分泌内科の今井淳太准教授、菅原裕人助教、片桐秀樹教授らのグループは、調べたい細胞が体内で増殖していることを、生きたままごく少量の採血で経時的かつ高感度に観察できるマウスの開発に成功しました。この方法を用いて、肝臓の細胞増殖に加え、より数が少ない膵臓β細胞(注2)の増殖を、同じマウスで、生きたまま、継続して観察することに成功しました。さらにこのマウスの細胞は、細胞を増やす薬剤の探索に応用できる可能性があることもわかりました。
これらの方法を用いることで、実験資源を有効に活用しながら、インスリン産生細胞を増やす糖尿病の根治薬や、がん細胞の増殖を抑える薬剤など、多くの疾患の治療法の開発が進むことが大いに期待されます。
本研究成果は、2023年6月14日午前10時(現地時間、日本時間6月14日午後6時)Nature Communications誌に掲載されます。
【用語説明】
注1. 細胞の増殖:一つの細胞が二つに分裂することによって細胞が増えること。臓器の働きや大きさを正常に維持する上で極めて重要な仕組み。また、癌細胞の増殖は癌が大きくなる原因として知られる。
注2. β細胞:血糖値を下げるホルモンであるインスリンを作る体内唯一の細胞。ランゲルハンス島といわれる膵臓の中にある多くの島状の部位に集まって存在する。このβ細胞の働きが悪くなったり、数が減ったりすることで、糖尿病が発症することが知られている。
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