お知らせ
重症虚血性心疾患に対する非侵襲性体外衝撃波治療の開始
我が国では、人口の高齢化や糖尿病患者の増加に伴い、従来の治療法(冠動脈カテーテル治療、冠動脈バイパス手術)の適応とならない重症の冠動脈病変を有する虚血性心疾患患者が増加してきております。このような症例では軽労作で胸痛が出現するため生活の質(QOL)は著しく低下しており、また予後も極めて不良であることから、新しい治療法の開発が望まれております。
体外衝撃波治療法は、泌尿器科領域で結石破砕治療として広く普及しており保険適応にもなっている安全な治療法です。7月1日付けで東北大学病院に循環器内科教授として着任した下川は、前任地の九州大学において、尿路結石破砕治療に用いられている出力の約10分の1という低出力の衝撃波を体外から虚血心筋に照射すると、冠動脈の血管新生が効率よく誘導され心筋虚血が著明に改
善されることを、大型動物(ブタ)モデル、次いでヒトにおいて確認し論文発表しております。この治療に伴う副作用は全く認めませんでした。またこの体外衝撃波治療は、心臓へ応用するにあたり、他の先進医療(遺伝子治療、未分化細胞移植)と異なり、開胸手術や全身麻酔など侵襲性の処置を全く必要としない低侵襲性の治療法です。低侵襲性で安全な治療法なので、繰り返し行うことも可能です。
具体的には、治療する心臓の部位を心エコーで確認しながら、治療範囲に応じて20-120ヵ所に200発ずつ、心拍に同期させて衝撃波を照射します。これを1週間に3回行います。1回あたり2
時間程度の治療中、患者に痛みはなく麻酔も不要です。3ヵ月後?6ヵ月後?1年後に治療効果を評価し、必要に応じて治療を追加します。九州大学で経験した10例において、個人差はあるものの全例において、自覚症状に加えて他覚的な検査所見の改善が認められています。
この度、東北大学医学部倫理委員会の承認を得て、「重症虚血性心疾患に対する非侵襲性体外衝撃波治療法」に関する新しい試験プロトコールによる臨床試験を開始する運びとなりました。今後、この新しい治療法の効果を科学的に証明することにより、本治療法の有効性?安全性が確認され、世界に普及することが期待されます。
お問い合わせ先
東北大学病院 循環器内科
下川 宏明
伊藤 健太
TEL : 022-717-7153 FAX : 022-717-7156
E-mail : ito-kenta@cardio.med.tohoku.ac.jp